基本計画でビジョンや戦略を定めても、それだけでは給食システムは変わらない。収支を改善する、省人化を進める、安全性を高めるという方針を、現場が実行できる具体的な仕事へ変換する必要がある。その役割を担うのが実施計画である。
実施計画とは、導入する機器や工事の日程をまとめたものではない。基本計画で定めた施策を具体化し、組織として実行するためのアクションプランである。
基本計画と実施計画を混同しない
基本計画では、将来どのような給食部門をつくるのかを定める。ビジョン、戦略、生産方式、収支、人員、投資など、進む方向と基本的な条件を決める段階である。
一方、実施計画では、その方向を実現するための仕事を細分化する。栄養基準をいつまでに整理するのか、献立を誰が作成するのか、勤務シフトをどのように変更するのか、機器仕様を誰が確認するのかなど、行動できる単位まで落とし込む。
基本計画が目的と方向を示すものであるのに対し、実施計画は、その目的を達成するための手段と行動を定めるものである。
四つの問いを曖昧にしない
実施計画では、少なくとも「誰が・何を・いつまでに・なぜ」を明らかにしなければならない。
「誰が」は、単なる担当部門ではなく、責任者、実務担当者、協力部門、意思決定者まで明確にする。「何を」は、作業内容だけでなく、完成させる成果物や完了条件を示す。「いつまでに」は、最終期限だけでなく、途中の工程や確認日も設定する。「なぜ」は、その仕事がどの目標につながるのかを共有することである。
さらに、「どのように行うのか」「何を使って行うのか」も欠かせない。方法、手順、安全基準、必要人員、予算、材料、機器、時間を具体化して初めて、実行可能な計画となる。
ソフトとハードを一つの計画にする
給食システムの実施計画は、厨房機器やレイアウトだけを対象とするものではない。
ソフト面では、収支計画、栄養基準、献立とサイクル、生産日、食数、スタッフ構成、勤務シフト、教育、調理・冷却・保存・盛り付け・再加熱・洗浄の各工程、HACCPに基づく衛生基準、給食管理システム、BCPなどを整理する。
ハード面では、必要能力を根拠とした機器の種類と台数、厨房レイアウト、建築仕様、給排水、換気、空調、エネルギー設備などを定める。
ソフトとハードを別々に計画すると、運用に合わない設備や、設備能力を生かせない作業工程が生まれる。ヒト・モノ・カネを一つのシステムとして整合させることが必要である。
六つのステップで行動へ変える
実施計画は、目標の定義、必要な情報の調査、リスクの洗い出し、工程と節目の設定、タスクの割り当て、必要資源の配分という順で具体化する。
特に重要なのは、クライアントと関係者によるワーキングチームを編成することである。栄養部門だけでなく、経営、施設、情報、感染管理、委託会社、厨房会社などが関わる計画では、誰が最終判断を行うのかを曖昧にしてはならない。
ただし、項目を細かく並べるだけでは計画にならない。タスク同士の前後関係、優先順位、責任の所在を明確にし、進捗を確認できる状態にする必要がある。
実施計画の目的は、立派な資料を作ることではない。関係者が同じ目標と条件を共有し、予定と実行のギャップを最小限にすることである。「誰かがやる」から、「誰が、何を、いつまでに、なぜ行うのか」へ変えることが、改革を具体的な成果につなげる。
※HFSA News Letter 第17号の内容をもとに、普遍的なコラムとして再構成。
窪田 伸
株式会社ミールシステム 取締役会長
一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会 代表理事
1976〜2005年株式会社セントラルユニに勤務。
1980年〜1982年宮川フードサービス研究所に出向。
1994年に国内初のクックチルシステムをJA札幌厚生病院に納入。
1998年には国内初のニュークックチルシステムを柳原病院に納入。
2004年国内最大級のニュークックチルシステムを福井県立病院に納入。
2005年株式会社ミールシステム設立、代表取締役に就任、2018年同社取締役会長に就任。
2020年一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会 設立、代表理事就任。
2014年〜2022年一般社団法人日本能率協会「HOSPE×Japan」病院・福祉給食セミナーコーディネーター
2014年〜2016年一般社団法人日本フードビジネスコンサルタント協会理事
2019年〜2020年ヒトタ食品株氏会社取締役
