給食現場では、作業工程の見直し、勤務シフトの調整、食材価格の交渉、厨房機器の更新など、さまざまな改善が続けられている。いずれも必要な取り組みであり、現場の努力を否定するものではない。
しかし、人手不足、赤字、食材料費や光熱水費の上昇、多品種少量生産という問題は解消されていない。改善を重ねても状況が変わらないのであれば、個々の取り組みではなく、それらの前提となっている給食システムの構造を疑う必要がある。
従来の仕組みを残した改善には限界がある
部分改善は、現在の業務を前提として、その一部を効率化する取り組みである。機器を入れ替える、作業時間を短縮する、仕入価格を下げるといった対策には一定の効果がある。
一方、増え続けた食種や献立、複雑な個別対応、一日三食をすべて施設内で生産する体制、人海戦術に依存した作業工程が残れば、得られる効果は限定的である。ある工程で人員を減らしても、別の工程に作業が移るだけということも起こる。
新しい厨房を整備し、クックチルとクックサーブを併用しても、栄養基準や献立、勤務体制が従来のままでは、大幅な効率化にはつながらない。経営目標のない計画は、新しく見えても、完成した時点ですでに現状に合わないものとなりかねない。
「当たり前」を一度外して考える
ゼロベースで考えるとは、これまでの取り組みをすべて否定することではない。現在のやり方を当然の条件とせず、必要性を一つずつ問い直すことである。
現在の食種はすべて必要なのか。個別対応は治療上必要なものに整理できないか。すべての料理を院内でつくる必要があるのか。常食は外部生産とし、特別食だけを施設内でつくる方法はないか。施設ごとの仕入れや生産を続けるのではなく、共同仕入れ、共同献立、共同生産へ移行できないか。
守るべきものは、従来の作業方法ではない。安全性、治療上必要な栄養管理、食事の質、そして一日三食を継続して提供することである。その目的を守るために、手段を変えるのである。
一施設だけで解決する前提も見直す
施設単独での改善にも限界がある。食材を少量ずつ購入し、各施設が同じような設備と人員を抱えて三食を生産する仕組みは、労働力が減少する社会では維持しにくい。
地域や法人単位で食材を共同購入し、栄養基準と献立を標準化する。その先に共同生産やセントラルキッチンを検討する。内製、完調品、外部生産を組み合わせるハイブリッド化も含め、施設の境界を越えて給食機能を再設計する必要がある。
全体を描き直してから改善策を選ぶ
ゼロベース改革では、まず必要な食事サービスを定義する。次に食種、献立、生産方式、調達方法を整理し、その運営に必要な人員、設備、面積、投資額を算出する。機器の選定や勤務調整は、その後に行うべきである。
部分改善が不要なのではない。全体構造を描き直したうえで、目標達成に必要な改善だけを選ぶことが重要なのである。
これまでの延長線上で努力を重ねるだけでは、これからの二十年、三十年を乗り切ることは難しい。難局を打開するためには、現在の仕組みを守ることからではなく、何を残し、何をやめ、何を共同化するのかをゼロベースで考えることから始めなければならない。
※HFSA News Letter 第13・14・20・22・23号の内容をもとに、普遍的なコラムとして再構成。
窪田 伸
株式会社ミールシステム 取締役会長
一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会 代表理事
1976〜2005年株式会社セントラルユニに勤務。
1980年〜1982年宮川フードサービス研究所に出向。
1994年に国内初のクックチルシステムをJA札幌厚生病院に納入。
1998年には国内初のニュークックチルシステムを柳原病院に納入。
2004年国内最大級のニュークックチルシステムを福井県立病院に納入。
2005年株式会社ミールシステム設立、代表取締役に就任、2018年同社取締役会長に就任。
2020年一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会 設立、代表理事就任。
2014年〜2022年一般社団法人日本能率協会「HOSPE×Japan」病院・福祉給食セミナーコーディネーター
2014年〜2016年一般社団法人日本フードビジネスコンサルタント協会理事
2019年〜2020年ヒトタ食品株氏会社取締役
