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【会長コラム】vol.26 いきなり実施計画に入ると失敗しやすい理由

 

給食部門では、赤字、人手不足、食材料費や光熱水費の上昇、多品種少量生産による生産性の低下など、複数の問題が同時に起きている。危機感が強くなるほど、すぐに具体策を決めて行動しなければならないと考えがちである。

そこで、完調品を導入する、委託範囲を変更する、厨房機器を更新する、セントラルキッチンを建設するといった実施計画から検討を始めてしまう。しかし、こうした進め方は、行動が早いように見えて、結果的に改革を遠回りさせることがある。

手段を決めても原因は解決しない

完調品、委託化、新しい調理システムなどは、それ自体が悪いわけではない。問題は、自施設が抱える課題の原因を確認する前に、手段を決めてしまうことである。

人手不足を例にしても、単純な採用難だけが原因とは限らない。食種や献立が多過ぎる、個別対応が整理されていない、作業が特定の時間帯に集中している、勤務体制や厨房動線に無駄があるなど、さまざまな要因が考えられる。

原因を分析しないまま設備を入れても、複雑な作業は残る。外部から食品を購入しても、食種や献立を整理しなければ、検品、仕分け、盛り付け、個別対応に人手を要する。症状だけに対処しても、問題の根は残ったままである。

成功を判断する基準がなくなる

現状分析とともに必要なのが目標設定である。赤字をいくら縮小するのか、必要人員を何人にするのか、一食当たりのコストや生産性をどこまで改善するのかを明確にしなければならない。

目標がないまま実施計画に入ると、機器を導入した、委託契約を変更した、厨房を新しくしたという事実だけが成果になってしまう。投資前と比べて収支や人員、生産性がどう変わったのかを評価できず、改善効果が小さくても計画を見直せない。

改革では、現状と目標との間にどの程度の差があるのかを確認し、その差を埋めるために必要な解決策を選ぶことが重要である。

給食システム全体の整合性が失われる

給食運営は、栄養基準、食種、献立、食材、生産方式、人員、設備、衛生管理、配送、収支が相互に関係する一つのシステムである。一部分だけを変えても、ほかの部分との整合性がなければ十分な効果は得られない。

特に設備投資は慎重に判断しなければならない。あるセントラルキッチンでは、建物、付帯設備、厨房機器の減価償却費が収入の四割近くを占めていた。衛生性や生産能力を高めても、過剰な投資によって経営が圧迫されれば、持続可能な仕組みとはいえない。

必要な能力、台数、面積、投資額は、食数や作業工程などの根拠から算出する必要がある。

実施計画は前段階の結論を具体化するもの

改革は、事実に裏付けられた現状分析から始め、目標とゴールを設定し、現状とのギャップを明らかにする。そのうえで複数の解決策を比較し、実行可能な計画へ落とし込む。

実施計画とは、思いついた手段を並べることではない。誰が、何を、いつまでに、どのように行うのかを定め、分析と目標を具体的な行動へ変える段階である。

手順を守ることは、改革を遅らせることではない。効果の小さい部分改善や根拠のない投資を避け、限られた人材と資金を本当に必要な改革へ集中させるために欠かせないのである。

※HFSA News Letter 第13号の内容をもとに、普遍的なコラムとして再構成。

 

 

 

 

 

窪田 伸

株式会社ミールシステム 取締役会長
一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会 代表理事
1976〜2005年株式会社セントラルユニに勤務。
1980年〜1982年宮川フードサービス研究所に出向。
1994年に国内初のクックチルシステムをJA札幌厚生病院に納入。
1998年には国内初のニュークックチルシステムを柳原病院に納入。
2004年国内最大級のニュークックチルシステムを福井県立病院に納入。
2005年株式会社ミールシステム設立、代表取締役に就任、2018年同社取締役会長に就任。
2020年一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会 設立、代表理事就任。
2014年〜2022年一般社団法人日本能率協会「HOSPE×Japan」病院・福祉給食セミナーコーディネーター
2014年〜2016年一般社団法人日本フードビジネスコンサルタント協会理事
2019年〜2020年ヒトタ食品株氏会社取締役

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