給食部門では、人手不足、赤字の拡大、食材料費や光熱水費の上昇など、早急に対応しなければならない問題が山積している。危機感が強くなるほど、完調品の導入、委託化、厨房機器の更新、セントラルキッチン化といった具体策から検討を始めたくなる。
しかし、解決策を急いで選んでも、それが自施設の問題に合っていなければ成果にはつながらない。改革は、現状分析、目標設定、計画、実行という順序で進める必要がある。
現状を事実と数字で捉える
最初に行うべきことは、給食部門の現状を計数化し、問題点を抽出、整理、評価することである。
収入、食材料費、人件費、委託費、光熱水費、設備費などの収支だけではない。病床数と提供食数、栄養基準と食種、個別対応、献立数、勤務体制、作業時間、生産性、衛生管理、厨房のレイアウトや作業動線まで確認する。
人が足りないという現象があっても、原因が採用難だけとは限らない。食種や献立が多過ぎるのか、作業が特定の時間帯に集中しているのか、設備配置や動線に無駄があるのかによって、必要な対策は変わる。
何が問題なのか。なぜその状態になったのか。原因はどこにあるのか。これを明らかにすることが変革の第一歩である。
あるべき姿と現状の差を明確にする
現状分析の次は目標設定である。問題点を並べるだけでは、改革の方向は定まらない。
将来、どのような給食部門をつくるのかというビジョンを示し、その実現に必要な目標を設定する。食事提供を継続できる収支にする、必要人員を削減する、安全性を確保する、生産性を高めるなど、成果を確認できる形にすることが重要である。
目標がなければ、完調品や新しい調理方式を導入しても、それが成功したのか判断できない。現状と目標の差を明らかにすることで、初めて取り組むべき課題が見えてくる。
基本計画から実施計画へ落とし込む
目標が決まったら、解決策を基本計画として組み立てる。ビジョン、戦略、戦術、事業計画をつなぎ、収支、人員、栄養基準、献立、生産方式、設備投資などを一体として検討する。
一つの案を前提にするのではなく、複数案を比較しなければならない。それぞれの必要人員、運営費、投資額、効果、リスクを算出し、長期的な収支や投資回収の可能性まで確認する。
そのうえで実施計画をつくる。誰が、何を、いつまでに、どのように、なぜ行うのかを明確にし、工程、役割、必要な資源を具体的なタスクへ落とし込む。基本計画が方向を定めるものであるのに対し、実施計画はその方向を行動に変えるものである。
計画を組織の行動へ変える
実行段階では、担当者だけに任せるのではなく、関係部門によるワーキングチームを編成する。運営基準や作業手順を整え、スタッフ教育、設備導入、システム移行を工程に沿って進める。
実行後は、予定と実績の差を確認する。人員や収支、生産性、安全性が目標に近づいたのかを検証し、差があれば原因を再分析して計画を修正する。この確認がなければ、導入したこと自体が成果になってしまう。
給食部門に残された時間は多くない。しかし、急ぐことと工程を飛ばすことは同じではない。現状を正しく捉え、目標を定め、根拠のある計画をつくる。その順序を守ることが、実行の精度を高め、改革を具体的な成果につなげるのである。
※HFSA News Letter 第13・15・16・17号の内容をもとに、普遍的なコラムとして再構成。
窪田 伸
株式会社ミールシステム 取締役会長
一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会 代表理事
1976〜2005年株式会社セントラルユニに勤務。
1980年〜1982年宮川フードサービス研究所に出向。
1994年に国内初のクックチルシステムをJA札幌厚生病院に納入。
1998年には国内初のニュークックチルシステムを柳原病院に納入。
2004年国内最大級のニュークックチルシステムを福井県立病院に納入。
2005年株式会社ミールシステム設立、代表取締役に就任、2018年同社取締役会長に就任。
2020年一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会 設立、代表理事就任。
2014年〜2022年一般社団法人日本能率協会「HOSPE×Japan」病院・福祉給食セミナーコーディネーター
2014年〜2016年一般社団法人日本フードビジネスコンサルタント協会理事
2019年〜2020年ヒトタ食品株氏会社取締役
