厨房の新築や改修を検討すると、再加熱カート、スチームコンベクションオーブン、ブラストチラー、食器洗浄機など、具体的な機器の話から始まりやすい。再加熱カートはどのメーカーがよいか、と尋ねられることも少なくない。
しかし、食数、食種、献立、生産方法、作業工程、必要人員が決まっていない段階では、必要な機能も処理能力も台数も算出できない。どの機器を入れるかという問いは、給食システムを設計した後に出てくるものである。
機器は目的ではなく手段である
ニュークックチルを導入すれば、安全性、適温提供、労働条件、生産性の向上が期待できる。一方で、設備投資が増え、厨房面積やエネルギーを必要とし、システム構築にも時間と費用がかかる。
導入するだけで、自動的に人員が減り、収支が改善するわけではない。多品種少量生産や複雑な個別対応を残したままでは、機器が変わっても作業量は大きく変わらない。むしろ新しい工程や管理作業が加わり、運営が複雑になる場合もある。
ニュークックチル、完調品、ハイブリッド、セントラルキッチンは、いずれも給食改革の目的ではない。経営目標を実現するための手段であり、道具である。
先に給食システムを設計する
最初に明らかにすべきことは、給食部門が何を目指すのかである。三食提供の継続、安全性の確保、必要人員の削減、収支改善、一定の患者満足など、実現したい成果を具体的に定める。
次に、食数、提供時刻、食種、品質水準を整理する。そのうえで栄養基準、献立、使用食材、生産日、食事変更の締切時間などのソフト面を設計する。
続いて、生産品目ごとの工程、ピーク時の処理量、必要人員、作業時間を算出する。自家生産する料理と外部から調達する料理も、この段階で分ける必要がある。
ここまで決まって初めて、厨房の動線、必要面積、既存厨房の活用、エネルギー条件を検討できる。その結果として、必要な機器の種類、能力、台数、配置が決まるのである。
機器価格だけで比較しない
機器選定では、本体価格だけを比較してはならない。建築費、付帯設備費、人件費、光熱水費、保守費、作業時間、食品ロスまで含め、導入によって何がどれだけ改善するのかを数値化する必要がある。
重要なのは、費用に対して得られる効果と、かけた時間に対して得られる成果である。安い機器を購入しても人員が減らなければ、費用対効果は高くない。高性能な機器でも、使用頻度が低く能力を持て余せば、過剰投資になる。
施設内生産とハイブリッド方式についても、食材費だけでなく、人件費、光熱水費、厨房面積、設備投資を含むトータルコストで比較すべきである。
厨房を大きくつくる時代ではない
建築費が上昇し、人も資金も不足する中、新しい厨房を広くつくり、多数の機器を並べる発想は見直さなければならない。既存厨房のリノベーション、居抜き施設の活用、外部生産品との組み合わせによって、厨房をコンパクトにする選択肢もある。
厨房機器会社は、機器の提案、販売、施工における専門家である。しかし、その機器を使って何人で運営し、どれだけ収支を改善するかを決めるのは、施設側の給食マネジメントである。
機器に運営を合わせるのではなく、目指す運営に必要な機器を選ぶ。この順序を守ることが、厨房を単なる設備の集合ではなく、成果を生み出す給食システムにする条件である。
※HFSA News Letter 第6・14・24号の内容をもとに、普遍的なコラムとして再構成。
