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【会長コラム】vol.23 ビジョンのない戦術は、努力の方向を迷わせる

給食改革の検討では、ニュークックチルを導入する、完調品を購入する、委託から直営へ切り替える、セントラルキッチンを建設するといった具体策が最初に話題になりやすい。

戦術は目に見えるため、議論もしやすい。しかし、何を実現するための手段なのかが決まっていなければ、その選択が正しいか判断できない。設備を導入したものの人員が減らない、完調品を採用したものの献立が複雑なまま、セントラルキッチンを建設したものの投資を回収できないという結果にもなりかねない。

ビジョンや戦略をつくらず、いきなり戦術から入ることが、給食システムの迷走を招いている。

ビジョン・戦略・戦術を分ける

ビジョンは、給食部門が将来どのような姿を目指すのかを示すものである。働き手と経営資源が減少する中でも、限られた人員で、安全な三食提供と健全な経営を継続する。このような将来像が出発点になる。

戦略は、ビジョンを実現するために進む方向である。食種や献立を標準化する、外部生産を活用する、生産を集約する、少人数で運営できる工程へ変えるといった方針が該当する。

戦術は、戦略を実行する具体的な方法である。クックサーブ、クックチル、ニュークックチル、フリーズ、完調品、ハイブリッド、キッチンレス、セントラルキッチンなどは、いずれも戦術であり、目的そのものではない。

手段を先に決めると評価基準がなくなる

ビジョンがなければ、何をもって成功とするのかが分からない。省人化が目的なのか、収支改善なのか、安全性向上なのか、患者満足なのかによって、選ぶべき手段は異なる。

例えば、新病院の全体構想では、健全で効率的な経営による持続可能性を掲げているにもかかわらず、栄養部門の計画に経営目標がなく、従来型のクックチルとクックサーブの併用だけが記されていることがある。これでは、病院全体のビジョンと栄養部門の計画がつながっていない。

調理方式を記載しただけでは、何人で運営するのか、赤字をどこまで改善するのか、投資額を何年で回収するのかは明らかにならない。計画の段階で方向性が陳腐化してしまう危険がある。

数値計画が戦術の選択を支える

ビジョンと戦略を定めたら、給食料収入、食材料費、人件費、光熱水費、減価償却費、必要人員、生産性を数値化する。そのうえで、現行方式と複数の改善案を比較する必要がある。

セントラルキッチンであれば、初期投資、配送費、サテライトキッチンの整備費、長期収支、投資回収期間まで確認する。完調品であれば、購入費だけでなく、削減できる作業、人員、設備、光熱水費を検証する。

施設規模や地域条件が違えば、正解も変わる。グループ施設には一元化、小規模施設には完調品とキッチンレス、中規模・大規模施設にはハイブリッドが適する場合がある。最初から一つの方式に決めるのではなく、ビジョンへの適合度を比較して選ぶべきである。

努力を成果へ向ける

現場が懸命に努力していても、方向が違えば経営改善には結び付かない。ビジョンは抽象的な美辞麗句ではなく、何を守り、何を変え、どの数値を目指すのかを示す判断基準である。

ビジョンを定め、戦略を選び、数値計画で検証し、その後に戦術を決める。この順序を守ることが、給食改革を単なる設備更新で終わらせず、持続可能な給食システムへつなげる条件である。

※HFSA News Letter 第16・18・22号の内容をもとに、普遍的なコラムとして再構成。

 

 

 

 

 

窪田 伸

株式会社ミールシステム 取締役会長
一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会 代表理事
1976〜2005年株式会社セントラルユニに勤務。
1980年〜1982年宮川フードサービス研究所に出向。
1994年に国内初のクックチルシステムをJA札幌厚生病院に納入。
1998年には国内初のニュークックチルシステムを柳原病院に納入。
2004年国内最大級のニュークックチルシステムを福井県立病院に納入。
2005年株式会社ミールシステム設立、代表取締役に就任、2018年同社取締役会長に就任。
2020年一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会 設立、代表理事就任。
2014年〜2022年一般社団法人日本能率協会「HOSPE×Japan」病院・福祉給食セミナーコーディネーター
2014年〜2016年一般社団法人日本フードビジネスコンサルタント協会理事
2019年〜2020年ヒトタ食品株氏会社取締役

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