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【会長コラム】vol.18 数字のない危機感では組織は動かない

人手が足りない。食材費や光熱水費が上がっている。このままでは給食を続けられない。こうした危機感は、多くの給食現場で共有されているはずである。

しかし、「厳しい」「大変だ」と繰り返すだけでは、組織は動かない。危機の大きさが分からず、何から手を付けるべきかも決められないからである。危機感を行動に変えるには、現在の状態を数字で示す必要がある。

まず現在地を数字にする

最初に把握すべきは、給食部門の収入、支出、収支である。さらに、一食当たりの食材費、人件費、光熱水費、委託費、減価償却費を分け、何が赤字を生んでいるのかを確認する。

人手不足についても、「人がいない」だけでは不十分である。必要人員、実配置人員、欠員数、総労働時間、残業時間、一人当たりの生産食数を示せば、採用の問題なのか、業務量や配置の問題なのかが見えてくる。

食種数、献立数、個別対応件数、食事変更件数、廃棄量なども、現場の複雑さを示す重要な数字である。感覚ではなく事実を並べることで、初めて問題の構造を検討できる。

数字は単純化して共有する

ただし、集められる数字をすべて提示すればよいわけではない。細かな資料を大量に並べても、現場には伝わらない。

部門収支、一食当たり原価、必要な労働時間、生産性、安全性など、経営判断に必要な指標へ絞り込む。そして、現状、目標、両者の差を一目で分かる形にすることが大切である。

例えば、一食当たりの赤字額を年間食数に掛ければ、部門全体への影響が見える。食種や献立の整理によって何時間の作業を減らせるかを示せば、省人化が単なる人減らしではなく、業務の再設計であることも伝えやすくなる。

数字を単純化する目的は、問題を小さく見せることではない。経営者、管理栄養士、調理スタッフが同じ現実を見て、同じ言葉で話せるようにすることである。

目標がなければ改善も評価できない

現状を数値化したら、次に目標を定める。収支をいつまでにどこまで改善するのか、一食当たり原価をいくらにするのか、総労働時間や残業時間をどれだけ減らすのかを明確にする。

そのうえで、食種の整理、献立のグループ化、完調品の活用、作業工程や人員配置の見直しなど、具体策を計画する。実行後は同じ指標で効果を測り、結果が出なければ原因を確認して修正する。

目標基準も評価の仕組みもなければ、改善したつもりで終わってしまう。短期的な成果を数字で確認し、その成果を次の変革につなげることが必要である。

数字は行動を起こすために使う

数字だけで給食の価値を判断してはならない。喫食者満足、食事の品質、食品衛生、治療上必要な個別対応には、単純な金額だけでは評価できない部分がある。

だからこそ、経営、生産性、満足度、安全性を分けて測り、総合的に判断する必要がある。都合のよい数字だけを選ぶのではなく、不都合な事実も含めて共有しなければならない。

強い給食部門には、小さな変化も問題として捉え、数字で確かめ、自ら改善し、それを継続する習慣がある。危機感は必要である。しかし、組織を実際に動かすのは、現実を示す数字と、そこから生まれる具体的な行動である。

※HFSA News Letter 第10・13・15・23号の内容をもとに、普遍的なコラムとして再構成。

 

 

 

 

 

窪田 伸

株式会社ミールシステム 取締役会長
一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会 代表理事
1976〜2005年株式会社セントラルユニに勤務。
1980年〜1982年宮川フードサービス研究所に出向。
1994年に国内初のクックチルシステムをJA札幌厚生病院に納入。
1998年には国内初のニュークックチルシステムを柳原病院に納入。
2004年国内最大級のニュークックチルシステムを福井県立病院に納入。
2005年株式会社ミールシステム設立、代表取締役に就任、2018年同社取締役会長に就任。
2020年一般社団法人ヘルスケアフードサービスシステム協会 設立、代表理事就任。
2014年〜2022年一般社団法人日本能率協会「HOSPE×Japan」病院・福祉給食セミナーコーディネーター
2014年〜2016年一般社団法人日本フードビジネスコンサルタント協会理事
2019年〜2020年ヒトタ食品株氏会社取締役

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