給食部門の赤字が常態化すると、「公定価格が低い以上、赤字は避けられない」「どの施設も同じである」と考えやすい。しかし、多くの病院が厳しい経営状況にある一方で、病院全体では黒字の施設も存在する。また、過去の病院給食の原価調査でも、管理費を加える前の生産原価段階では、収入が支出を上回った例がある。
この事実は、公定価格や物価上昇の問題が小さいことを意味しない。同じ制度と厳しい外部環境の中でも結果に差が生じている以上、赤字のすべてを外部要因だけでは説明できないということである。黒字施設を例外として片付けるのではなく、なぜ差が生まれたのかを調べる必要がある。
何をもって「黒字」とするのか
ただし、黒字という言葉だけを見て、単純に比較するのは危険である。病院全体が黒字でも、給食部門まで黒字とは限らない。生産原価段階で利益が出ていても、管理費を含めた総原価では赤字になることもある。まず、何を黒字と呼んでいるのかをそろえなければならない。
収支に含める費用の範囲、管理費の配賦、減価償却費、光熱水費、委託費の扱いは施設によって異なる。病床稼働率、提供食数、食種構成、直営か委託かといった条件も同じではない。黒字施設の存在は、すべての施設が同じ方法で黒字化できることの証明ではない。しかし、改善の余地がないという説明も成り立たない。
比べるべきは結果より仕組みである
比較するなら、まず同じ物差しにそろえる。一食当たりの収入と支出、生産原価と総原価、人件費、食材料費、光熱水費、労働時間、食数当たりの生産性を整理する。黒字施設から学ぶとは、その数字をそのまま目標にすることではなく、差を生んだ条件を分解することである。
見るべきは、栄養基準や食種が整理されているか、献立が標準化されているか、個別対応が必要以上に増えていないか、人員配置と作業工程が食数に合っているか、仕入れ、在庫、フードロス、エネルギーが管理されているかである。さらに、自家生産と外部調達の役割分担、設備の稼働率、安全管理、経営目標の共有まで確認する必要がある。
大きな収支差は、特別な設備一つから生まれるとは限らない。日々の小さな管理判断が積み重なり、年間では大きな差になる。逆に、収支を把握せず、目標も評価基準もないままでは、改善すべき場所さえ見えない。
反省とは現場を責めることではない
まず反省から始めるとは、現場の努力不足を責めることではない。これまで当然としてきた栄養基準、食種、献立、作業、人員、調達、設備の前提を、ゼロベースで問い直すことである。
黒字化がすぐに難しい施設もある。それでも、赤字幅をどこまで縮めるのか、一食当たり原価をいくらにするのか、生産性をどこまで高めるのかという目標は設定できる。黒字施設の存在が教えているのは、給食経営の結果は制度だけで決まらず、運営の設計とマネジメントによって変えられるということである。
黒字施設を特別な成功例として眺めるだけでは意味がない。自施設との違いを数値で確かめ、取り入れられる仕組みを一つずつ実行する。その姿勢こそが、赤字を常識にしない給食経営の出発点となる。
※HFSA News Letter 第15・22・23号の内容をもとに、普遍的なコラムとして再構成。
