病院や高齢者施設で「良い食事」といえば、おいしく、安全で、適温で提供され、病態や嚥下機能、嗜好にも配慮された食事であろう。喫食者の満足も欠かせない。個別化・多様化は、治療や療養の視点から見れば望ましいことであり、その方向性に異論はない。
しかし給食現場では、もう一つの問いを避けて通れない。その食事を、限られた人員と費用の中で、毎日三食、将来にわたって提供し続けられるのか、という問いである。
持続可能な給食システムの「マスト条件」
持続可能な給食システムを考えるうえでは、「マスト条件」と「ウオント条件」を分けて整理する必要がある。
マスト条件は、経営健全化、すなわち収支均等を目指すこと、省人化によって作業人員を削減すること、そしてHACCPの考え方に基づく安全性を確保することである。一方、環境への配慮や省エネルギー、喫食者満足は、より良い食事サービスを実現するためのウオント条件となる。
これは、喫食者満足を軽視するという意味ではない。経営が成り立たず、働く人が確保できず、安全が守れなければ、どれほど望ましい食事でも提供を続けられない。まず継続の土台を整え、その上で満足度を高めていくという優先順位である。
個別化・多様化には負担が伴う
病院食の個別化・多様化は、治療の側面から見れば良いことであり、異論はない。一方で、多品種少量生産には多くの人手と費用がかかる。人手不足に加え、人件費、食材料費、エネルギー費が上昇する中、従来と同じつくり方を続ければ、食事の持続的提供が困難になる事態も想定される。
必要なのは、個別対応をすべてなくすことではない。どの対応が治療上必要で、どこまで共通化できるのかを整理することである。栄養基準や食種を見直し、献立をグループ化し、少品種大量生産へ転換できる部分を明確にする。個別対応や形態加工についても、集約化と標準化を進める必要がある。
設備だけでは解決しない
ニュークックチルなどの新しい調理システムは、衛生・安全、適温提供、省人化、生産性向上に役立つ。しかし、それ自体が目的ではない。持続可能な給食システムを構築するための手段である。栄養基準や食種、献立、作業工程を整理せずに設備だけを導入しても、複雑な運用は残ったままである。
また、三食すべてを施設内でつくることを前提にする必要もない。急速な労働者人口の減少を考えれば、三食のすべてを施設内で生産し続けることは困難である。完調品や外部資源、地域での共同化も選択肢に入れ、施設内でつくるものと外部から調達するものを見極めなければならない。限られた人材を、本当に必要な業務へ振り向けることが求められる。
「良さ」を続けられる仕組みにする
効率性とホスピタリティ、衛生・安全とおいしさは、どちらか一方を選べば済むものではない。相反しやすい要素をコントロールし、両立させることが給食マネジメントの役割である。
コスパはもちろん重要である。しかし、その前に、毎日三食の食事提供を継続できる体制を担保しなければならない。
「良い食事」と「続けられる食事」は同じではない。だからこそ、個別化や満足度を否定するのではなく、それらを継続可能な生産・経営条件の中で実現する必要がある。食種、献立、生産方式、調達方法を見直し、必要な食事提供を続けられる仕組みに組み替えることが、これからの給食管理に求められている。
※HFSA News Letter 第6・11・14・18・20・23号の内容をもとに、普遍的なコラムとして再構成。
