病院・介護施設の栄養部門は、臨床栄養管理とフードサービスという二つの役割を担っている。両者は「栄養部門の両輪」であり、どちらか一方だけを強化しても、部門全体は健全に機能しない。
しかし現状は、臨床栄養管理が先行し、給食管理が軽視される傾向にある。患者の個別栄養管理が進み、個人対応が増える一方で、それに伴う人件費の増加や生産性の低下については、十分に検討されてきたとは言い難い。給食現場では、多品種少量生産に対応するため、人海戦術に頼らざるを得ない状況も生じている。
個別栄養管理を否定するものではない
病院食は治療の一環であり、患者の病態や栄養状態、嚥下機能などに応じた栄養管理は必要である。栄養学の進歩によって、食事が個別化・多様化してきたことは、治療支援の側面から大いに意義がある。
その一方で、多品種生産にはマンパワーとコストがかかることも理解しなければならない。すべてをオーダーメイド化し、きめ細かな対応を増やし続ければ、さらに人手を必要とし、労務コストの増加と部門経営の悪化を招く。ヒト・モノ・カネという経営資源が限られるなか、理想だけで給食システムを組み立てることはできない。
必要なのは「現実性のあるシステム」である
臨床栄養と給食管理は同じ業務ではない。それぞれの専門性を保ちながら連携し、現実性のあるシステムとして検討することが重要である。
そのためには、まず栄養基準と食種を見直し、献立のグルーピング、使用食材の統一、サイクルの統一、主食の種類や盛付量の整理を進める必要がある。その共通の基盤の上で、アレルギー対応や食形態の調整など、必要な個別対応を行う。個別栄養管理と給食の効率化を対立させるのではなく、両立させる仕組みをつくるのである。
両輪を機能させるマネジメント
給食部門には、収支、人員、生産性、食品衛生、食事サービスを含め、部門全体をマネジメントする人材が必要である。臨床栄養管理の方針を決めるだけでなく、その内容が給食現場で継続的に実行できるかを検証し、必要に応じて栄養基準、食種、献立、運営方法を見直す役割である。
現状では、こうした給食マネジメントを担う人材が不足している。臨床栄養とフードサービスを両立させるには、給食管理のプロフェッショナルを育成し、給食マネジメントシステムを確立しなければならない。
いま求められているのは、臨床栄養管理を後退させることではない。給食管理を臨床栄養管理と同じく重要なものとして捉え、限られた資源のなかで両者を機能させることである。
栄養学と給食管理のWell-Balanced、すなわちバランスの取れた調和が不可欠である。それが、食事の持続的提供と、持続可能な新たな給食システムにつながるのである。
※HFSA News Letter 第4・6・12・15・20号の内容をもとに、普遍的なコラムとして再構成。